動画編集の単価交渉は「値上げのお願い」で失敗する|通る3タイミングと文面例3つ
動画編集の単価交渉を受注側の実務で解説。フリーランスの67.1%が報酬を十分協議できていないという公取委・厚労省の調査を起点に、切り出す3タイミング、作業時間などの根拠の出し方、そのまま使える文面例3つ、断られた時に作業範囲で単価を上げる代替案まで整理します。
結論から言います。動画編集の単価交渉は「値上げのお願い」として出すと通りにくく、「作業範囲を増やす提案」として出すと通りやすくなります。発注者の予算は「1本いくら」で組まれており、同じ作業の値上げは予算の組み直しになります。「サムネイルも作る」「台本の初稿も出す」という提案は、別の人に払っていた費用や社内の手間の置き換えになり、予算の中で判断できます。
弊社はSNS運用代行 累計250社以上の現場で、発注側として多くの動画編集者と単価の話をしてきました。通った交渉に共通していたのは、切り出す時期、作業時間という数字、断られた時の代わりの案の3点がそろっていたことです。相場そのものはクラウドワークスの動画編集単価と動画編集の副業の単価相場で扱っています。単価は案件・時期で差があります。
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動画編集の単価交渉が通らない理由|報酬を「協議して決めた」人は3割
公正取引委員会と厚生労働省が2024年5〜6月に実施した実態調査(回答5,300件、法施行前の状況)では、フリーランス側の数字が次のとおり出ています。
| 設問(フリーランス側の回答) | 全業種 | 情報通信業(映像・画像・音楽制作、編集を含む) |
|---|---|---|
| 報酬の額を「十分に協議して決定した」と回答しなかった割合 | 67.1% | 66.3% |
| 価格転嫁が一部しか、または全くできなかった割合 | 62.5% | 73.5% |
| 取引条件を明示されなかったことがある割合 | 44.6% | — |
| 報酬を60日以内に支払われなかったことがある割合 | 28.1% | 31.3% |
出典:公正取引委員会・厚生労働省「フリーランス取引の状況についての実態調査(法施行前の状況調査)」2024年10月18日公表。「—」は業種別の上位3業種に入らず、本文で値を確認できなかった項目です。
映像編集を含む情報通信業の価格転嫁不十分は73.5%で、全業種より11ポイント高い数字です。動画編集は「報酬を話し合って決めていない」取引が多数派で、交渉が通らないのは個人の話し方の問題だけではありません。
弊社が発注側で見てきた「通らない交渉」は、金額だけを伝える(根拠がなく、他の編集者との比較で判断される)、作業後に伝える(発注者は予算の承認を取れないまま請求を受ける)、断られた後の案がない、の3型です。3つとも「値上げのお願い」の形で、以降の章ではこれを「提案」に組み替えます。
交渉を切り出す3タイミング|継続3本目・修正増加・納期短縮
単価の話は、いつ切り出すかで通りやすさが変わります。弊社の現場で通りやすかったのは次の3つです。
▼このコンセプトの「型」が分かる参考動画(弊社クライアントではない公開アカウント)
・社長の例:「社長の1日の流れを密着していく。」(@misaki_vlog7)
https://www.tiktok.com/@misaki_vlog7/video/7571308736694734101
・ヘアセットの例:「初めに内面・外面の両面からヒアリングを行い、それを基にヘアカット・メイクなどの施」(@himipoh)

| タイミング | 発注者側の状況 | 持っていく根拠 | 提案の形 |
|---|---|---|---|
| 継続3本目の納品時 | 1〜2本目で方向性が固まり、編集者を替えるコストを意識し始める | 1本あたりの作業時間の実測(3本分) | 4本目以降の本数・納期と合わせた単価の提示 |
| 修正回数が増えた時 | 修正が当初想定より多く、編集者側の負担が見えている | 修正の往復回数と追加時間の記録 | 「修正2回まで・3回目以降は1回いくら」の条件追加 |
| 納期短縮を依頼された時 | 急ぎの事情があり、引き受けてもらう必要がある | 通常納期と短縮後の納期、止める他案件 | 特急料金の設定(通常単価への上乗せ) |
継続3本目を選ぶのは、1〜2本目が方向性をすり合わせる期間だからです。弊社の編集者向けクライアントワークの手順でも「先に1本で方向性の合意を取ってから量産する」を基本にしており、1〜2本目は修正が多く作業時間が安定しません。3本目で型が固まり、1本あたりの時間を示せます。
発注側が最初に単価の段階を示している場合はそちらが優先です。弊社は最初の10本は1本2,000円、11〜100本目は2,500円、101本目以降は3,000円という段階を契約時に明示しています。この形の発注者には「次の段階に進む条件(本数・品質)」を確認するほうが早く進みます。
修正回数と納期短縮は「最初の条件と違う仕事」です。黙って引き受けると、その条件が次回以降の標準になります。
根拠の出し方|作業時間の記録・納品本数・クライアント側の成果
交渉の根拠は3種類あり、強い順に並べると「作業時間の記録」「納品本数」「クライアント側の成果」です。
根拠1:作業時間の記録。 最も通りやすい根拠です。弊社の現場で実際にあった例では、ロング動画の再撮影で素材が差し替わり、編集者が1から編集し直して約12時間かかりました。編集者は「再撮影で1から編集し、12時間程度かかった。差し込み箇所が2分程度あり、通常単価の7割程度を別途いただきたい」と作業内容・時間・希望額をセットで伝え、発注側はその日のうちに承諾しています。通った理由は、時間と作業内容が具体的で、発注側が妥当性をその場で判断できたからです。この編集者は「編集後の報告になってしまい申し訳ない」とも書いており、着手前に「追加で何時間かかる見込み」と伝えていれば、発注者は予算を先に確保できました。
記録は着手と納品の時刻で足ります。
根拠2:納品本数と納期の実績。 「これまで全て期日内に納品」のように、発注者が編集者を替えた場合に失うもの(1〜2本目の方向性合わせのやり直し)を数字で示します。
根拠3:クライアント側の成果。 再生数や保存数です。ただし成果は編集以外の要素で大きく動きます。弊社のショート動画170本の実測でも、再生数の差は話者で2〜5倍、CTAを後半に置くかで6.5倍、コンセプトで480倍と、編集技術以外で開いていました(業種・商圏で差があります)。使うなら「冒頭3秒の構成を変えた回から伸びた」のように、自分が担った工程との関係を示します。
動画編集の単価交渉の手順5ステップと文面例3つ
根拠がそろったら、次の順で進めます。メッセージは発注者とのやり取りで普段使っているチャット(クラウドソーシングならサイト内のメッセージ機能)に送り、口頭で合意した場合も同じ内容を文章で残します。
1. 現在の取引条件を確認する:単価、修正回数、納期、支払期日が書面やメッセージで示されているかを見直す。示されていない項目は、交渉と合わせて明記を依頼する 2. 作業時間を3本分集計する:1本あたりの平均時間と、修正・作り直しに使った時間を分けて出す 3. 提案の形に組み替える:「単価を上げてほしい」ではなく「4本目以降は、この範囲をこの本数でこの金額」と条件をセットにする 4. 次の案件の着手前に送る:作業後ではなく、発注者が予算を確認できる時点で送る。返答期限の目安も添える 5. 断られたら代替案を1つ出す:作業範囲を増やす案(次章)か、修正回数・納期の条件だけを整える案を出し、単価は次の区切り(10本目など)で再相談と合意しておく
以下は、そのまま使える文面例です。金額は例示で、自分の案件に置き換えて使います。
文面例1:継続3本目(範囲を増やす提案) 「3本の納品、ありがとうございました。1本あたりの編集時間は平均3時間でした。4本目以降、サムネイル制作もあわせてお引き受けできます。編集+サムネイルで1本○○円、月10本・納期3日でいかがでしょうか。サムネイルを別の方に依頼されている場合、そのやり取りも1本化できます。」
文面例2:修正回数が増えた時(条件の追加) 「直近3本で修正が平均3往復あり、1本あたり2時間ほど追加でかかっています。今後は修正2回までを単価に含め、3回目以降は1回○○円とさせていただけますか。修正指示はタイムスタンプ付きでいただけると、往復を減らせます。」
文面例3:納期短縮の依頼時(特急料金) 「翌日納品、対応可能です。通常は3日いただいている作業のため、他の案件を調整して対応します。今回は通常単価に○割を上乗せした○○円でお願いできますか。通常納期でよい回は、これまでどおりの単価で承ります。」
3つとも「時間の数字・条件・金額」が1通に入り、発注者はこれだけで判断できます。
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実案件発注保証つきスクールの詳細を見る ▶断られた時の代替案|作業範囲を増やして単価を上げる
交渉が断られても、編集者の収入を上げる手段は残っています。同じ作業の単価ではなく、1本あたりに担う範囲を増やす方法です。
| 追加する範囲 | 公開情報・弊社の単価の目安 | 必要なスキル | 発注者側のメリット |
|---|---|---|---|
| サムネイル制作 | 500〜3,000円/枚(第三者メディアの公開相場) | デザインツール、クリックされる文字量の設計 | 別のデザイナーとのやり取りが不要になる |
| 台本・構成の初稿 | 2,000〜3,000円/本(弊社スクールの実案件で台本を発注する単価) | 冒頭3秒の構成、訴求の組み立て | 担当者が台本を書く時間が減る |
| 投稿作業の代行 | 金額は案件ごとに設定(公開相場の裏付けなし) | 各SNSの投稿設定、予約投稿 | 動画ファイルを持っている編集者が投稿すれば、ダウンロードの手間が1回減る |
| 分析レポート(月1回) | 金額は案件ごとに設定(公開相場の裏付けなし) | 再生数・視聴維持率などの読み方 | 次の企画の判断材料が手に入る |
出典:サムネイルはLIG(2026年3月公開)の公開相場。台本は弊社スクールの実案件条件。単価は案件・時期で差があります。
範囲を増やす提案が通りやすいのは、発注者の予算を「増やす」話ではなく「置き換える」話になるからです。編集単価を上げずに1本の受注額が増え、台本・構成・分析まで担えば仕事は「編集」から「運用」に変わります。弊社代表の林が時給600円から5,600円に上がったのも、編集の腕ではなく担う範囲が変わったことが理由でした(個人差があります)。編集だけで時給が上がらない原因の分解は「動画編集の副業は稼げない」は本当か、運用側で案件を取る手順はSNS運用代行を副業で始める4ステップで扱っています。
交渉の前に確認したいフリーランス法の2つのルール
2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)は、発注事業者に次のような義務を定めています(公正取引委員会・中小企業庁の公式説明による。個別の判断は下記の窓口に相談してください)。
- 取引条件の明示:業務を委託したら直ちに、書面またはメール・SNSのメッセージ等の電磁的方法で、給付の内容、報酬の額、支払期日などを明示する
- 報酬の支払期日:成果物を受け取った日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定め、その日までに支払う(再委託の場合は例外あり)
1か月以上の業務委託では、報酬の減額や買いたたき、不当なやり直しの要求なども禁止行為です。公正取引委員会は施行後も勧告の実績を公表しており、2026年も勧告が続いています。
交渉で使えるのは手順1の「取引条件の確認」です。条件が示されていなければ「条件を文章でいただけますか」と依頼でき、文章になっていれば「修正3回目以降は別料金」も同じ場所に書き足せます。トラブル時の相談先は国の「フリーランス・トラブル110番」(弁護士によるワンストップ相談)です。
まとめ:動画編集の単価交渉は「範囲を増やす提案」で出す
| 観点 | 値上げのお願い(通りにくい) | 範囲を増やす提案(通りやすい) |
|---|---|---|
| 発注者の予算 | 同じ作業の値上げは予算の組み直しになる | 別の人に払っていた費用や社内の手間の置き換えになり、予算の中で判断できる |
| 伝える内容 | 金額だけ(他の編集者との比較で判断される) | 時間の数字・条件・金額を1通にセットで入れる |
| 伝える時期 | 作業後(発注者は予算の承認を取れないまま請求を受ける) | 次の案件の着手前(「追加で何時間かかる見込み」を先に伝える) |
| 断られた時 | 代わりの案がない | サムネイル・台本初稿・投稿代行など範囲を増やす案を出し、単価は次の区切りで再相談 |
| 結果 | 同じ作業の単価で比較され続ける | 編集単価を上げずに1本の受注額が増える |
- 公取委・厚労省の調査で、報酬を「十分に協議して決定した」と回答しなかったフリーランスは67.1%。映像編集を含む情報通信業では価格転嫁が一部しか、または全くできなかった割合が73.5%
- 通らない交渉は「金額だけ」「作業後」「代替案なし」の3型。いずれも値上げのお願いの形
- 切り出すタイミングは継続3本目・修正が増えた時・納期短縮の依頼時の3つ
- 根拠は作業時間の記録が最も強い。追加作業は着手前に「何時間かかる見込み」と伝える
- 手順は「条件確認→時間集計→提案に組み替え→着手前に送る→断られたら代替案」の5ステップ
- 断られたら、サムネイル・台本初稿・投稿代行など作業範囲を増やして1本の受注額を上げる。単価は案件・時期で差があります
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よくある質問(FAQ)
Q1. 動画編集の単価交渉はいつ切り出すのがよいですか? 継続3本目の納品時、修正回数が増えた時、納期短縮を依頼された時の3つです。1〜2本目は方向性のすり合わせで作業時間が安定しないため、3本分の実測を持ってから切り出します。
Q2. 単価交渉で断られたらどうすればいいですか? 同じ作業の単価ではなく、サムネイル制作や台本の初稿、投稿代行など担う範囲を増やす提案に切り替えます。単価そのものは「10本目で再相談」のように次の区切りを合意しておきます。
Q3. 修正や作り直しの追加費用は請求できますか? 取引条件で修正の範囲が決まっていれば、それを超える分の相談はできます。作業後ではなく着手前に「追加で何時間かかる見込み」と伝えると通りやすくなります。個別の判断はフリーランス・トラブル110番などの窓口に相談してください。
Q4. 発注者に取引条件を書面で出してもらうことはできますか? フリーランス法では、発注事業者は業務委託時に直ちに給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面または電磁的方法で明示する義務があります(公正取引委員会・中小企業庁の公式説明)。示されていなければ、メッセージで条件の明記を依頼できます。
Q5. 動画編集の単価の相場はいくらですか? 公開情報ではショート動画1,000〜5,000円/本、YouTube長尺3,000〜15,000円/本が目安です(2026年9月時点)。単価は案件・時期で差があります。
執筆者:林健斗(株式会社HolyTech 代表取締役)/SNS運用代行 累計250社以上 ショート動画を軸に店舗・企業のSNSマーケティングを支援。「顧客のその先へ」をミッションに、企画から分析まで一気通貫の運用代行を提供している。
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この記事を書いた人
林 健斗(はやし けんと)
株式会社HolyTech 代表取締役
2000年生まれ。大学在学中の2020年にSNSマーケティング事業を起業。再現性の高い運用ノウハウで、1人法人ながら34名の業務委託体制を構築し、累計250社以上へ継続率90%超で支援。漢方ヘッドスパで月間1,100万再生、動画編集スクールで初月640万再生など、業種横断で売上直結の成果を量産。「再生数ではなく売上で見る」を信条に、AI検索時代のSNS運用を提唱している。



